介護領域におけるフィトセラピーの活用について 林真一郎

  • コラム
  • 介護領域におけるフィトセラピーの活用について

    日本フィトセラピー協会副理事長 林真一郎

     

    わが国は世界に類をみないスピードで超高齢社会を迎え、介護の質的な向上が求められています。高齢者は肝機能や腎機能が低下しているため、一般に医薬品の副作用が生じやすくなっています。それに加えて複数の疾患や症状を抱えることが多いため、服用する医薬品の数が多くなります。こうした状態をポリファーマシー(多剤併用)といい、東京大学の老年病科の調査によると副作用は6剤以上、転倒の発生頻度は5剤以上で急激に高まります。

    一方で例えばジャーマンカモミールのハーブティーを服用した場合、体への負担はほぼありませんし不眠や胃腸の不調、肌荒れなど幅広い効能、効果が期待できます。どうしても必要な場合は服薬を優先すべきですが予防や軽い症状にはハーブを積極的に活用しましょう。次に介護領域に簡単に取り入れられる方法をいくつかご紹介しましょう。

     

     

    ①精油


    精油の消臭作用は悪臭を香りで「ごまかす」のではなく、悪臭の原因となる物質を分解するため効果が高く、空気を浄化する効果も得られます。臭い対策には北海道和薄荷などのミント系や青森ヒバ、木曽ヒノキなどの森林浴系の香りが有効であることが、林野庁などの研究で明らかになっています。

     

     

    ②ハーブ


    最近は介護予防でフレイル(frailty)という言葉が注目されています。フレイルを訳すと「虚弱」とか「老衰」となりますが老衰という概念とちがうのは、フレイルは適切に対処すれば元に戻るという点です。フレイル対策としては、栄養(食事)や運動に加えてハーブの活用が効果的です。例えば強壮作用をもつエゾウコギ(シベリア人参)のハーブティーを服用します。この場合の「強壮」とは興奮という意味ではなく生命力の賦活という意味です。ビタミンやミネラルを豊富に含み、泌尿器のトラブルを防ぐパンプキンシード(薬用かぼちゃの種子)をおつまみにするのもよいでしょう。

     

     

    ③芳香蒸留水


    ベッドサイドにローズウォーターやクロモジウォーターなどの芳香蒸留水が1本あると、とても役立ちます。高齢者は皮膚が乾燥しやすいのでスキンローションとして使用できます。保湿が足りないときはローズウォーターで補水したあと椿油などをうすく延ばして水分の蒸発を防ぎます。清拭に使用するとほのかにバラの香りが楽しめますし、ドライシャンプーにも活用できます。
    クロモジウォーターは抗菌作用をもつため白癬(水虫)予防に有効です。
    さて、①~③を実際に介護現場で活用するとハーブや精油の効用に加えてコミュニケーションが円滑になるなど、副次的な効用が得られることがわかります。このことは介護の質の向上に直結します。さらにプランターでハーブを育てるといったことも身近な園芸療法もであり、ご本人の生き甲斐になりQOLを高めるのに役立ちます。

     

    【林 真一郎 プロフィール】

    ソフィアフィトセラピーカレッジ代表/グリーンフラスコ代表 薬剤師/東邦大学薬学部客員講師/静岡県立大学大学院・日本赤十字看護大学大学院非常勤講師。
    「ファーマシューティカルアロマセラピー&メディカルハーブ」(南山堂)、「植物力をくらしに活かす『緑の医学』」(東京堂出版)、「臨床で活かせるアロマ&ハーブ療法」(南山堂)他、著書多数。

     

     

    一覧はこちら