フィトヘルスプロモーションという考え方 佐佐木景子

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  • フィトヘルスプロモーションという考え方

    日本フィトセラピー協会理事 佐佐木景子

     

    フィトセラピーを学んだ皆さんは、ご自身やご家族の健康管理に日々フィトセラピーを役立てていらっしゃることと思います。ここで改めて「健康」とは何かという事を考えてみたいと思います。
    世界保健機関(WHO)が1948年に発布した憲章では、以下のように定義しています。

    「健康とは、病気ではないとか、弱っていないということではなく、肉体的にも、精神的にも、そして社会的にも、すべてが 満たされた状態にあることをいいます。」(日本WHO協会訳)

    健康はただ疾病に罹患していない状態をいうのではなく、個人の「満たされた状態」を指しているのですね。 健康観は国によっても、社会情勢によっても、個人の生き方によっても、それぞれに違うものなので、それぞれの個人が自分らしく、心も体も生き生きと生活できる状態を「健康」と呼ぶのでしょう。

    その後の1986年に、WHOは新しい健康観に基づく21世紀の健康戦略として「ヘルスプロモーション」を提案しています。その定義は次のように定められました。

    「人々が自らの健康とその決定要因をコントロールし、改善することができるようにするプロセス。」(日本ヘルスプロモーション学会訳)

    より積極的なアプローチを行い、そのプロセスを大切にするという考え方です。
    これからのフィトセラピーも、より能動的に社会とかかわりながら広めていくことが必要なのではないかと考え、思いついたのがフィトヘルスプロモーションという考え方です。
    フィトヘルスプロモーションとはフィトセラピーを積極的に活用して、心身の健康の維持増進や社会貢献に役立てていこうとする試みです。

     

    先に述べたように、健康観は社会状況や歴史的背景などによっても違いがあります。
    そこで、日本の現状とこれからを考えてみたいと思います。

     

    日本では集団の幸福や健康が、個の幸福や健康よりも重視される時代が長く続いてきました。このような伝統的な価値観や既存の社会システムはすでに崩壊して、新しい社会システムへと変化しています。個が重視されるようになったことで、社会との新しい関わり方を創出する必要性に迫られています。これまでの集落のような生死を共にする共同体ではなく、ある程度の距離を保ちながらお互いに支え合う社会を構築していかなければならないと考えます。「集団のために個がある」のではなく「個のために集団が援助する」という方向に進んでいかなければならないでしょう。
    個人の心と体だけではなく、生活環境、人間関係なども含めたホリスティックな健康観に基づいた対応が必要になっていると感じています。
    自分自身や家族へのフィトヘルスケアの学びを基本にして、フィトセラピーの教育、地域と連携した植樹や育樹、心身の不調への園芸療法や森林療法の活用、高齢者の生きがい創出のための植物の育成や野菜の栽培、介護や看護の現場での利用、農福連携による福祉活動など、より積極的にフィトヘルスプロモーションは発展していくことでしょう。
    フィトヘルスケアアドバイザーの果たす役割は今後大いに期待できるということです。

     

     

    【佐佐木景子 プロフィール】

    西九州大学客員准教授
    ソフィアフィトセラピーカレッジ主任講師
    日本心身健康科学会認定心身健康アドバイザー
    アロマセラピスト
    アロマセラピーの正しい理解と普及のために、22年間スクールや専門学校等において指導を行う。
    また、ターミナルケア病院、産婦人科病院等での15年間の経験を基に、医療機関でのホリスティックケアの提案を行っている。医療、看護、介護、リハビリテーションの現場でのフィトセラピーとタッチケアの普及のために、大学での講義を行うなど幅広く活動をしている。

     

     

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